帝京大学臨床研究センター(Teikyo Academic Research Center:TARC)センター長の大須賀穣です。TARCの役割と意義についてご紹介いたします。皆さんご存知のように、医学の進歩にとって研究は必要不可欠です。医学研究の歴史を振り返りますと、日本では明治時代におけるドイツ医学の導入以来、細胞や動物を使った基礎研究が重視されてきました。病原菌の発見など基礎研究の成果はそのまま臨床の発展へとつながりました。このため我が国では基礎研究を重視した研究の基盤が整備されてきました。しかしながら、医学が高度化、複雑化するにつれ直接ヒトを対象とする臨床研究の重要性が徐々に増してきました。特に、20世紀終わりごろよりヒトを直接の対象とした臨床研究の結果を科学的根拠(エビデンス)として重視するエビデンス?ベースド?メディスン(EBM)の概念が欧米から日本に導入され、臨床における考え方が大きく変化しました。このような時代の流れを受けて2012年に我が国でいち早く帝京大学に臨床研究センターが立ち上げられました。これは現在TARCの顧問である寺本民生教授のご慧眼によるものでした。TARCは臨床研究の専門家によって構成されています。帝京大学医学部附属病院をはじめとして、帝京大学での診療や学術活動における着想を育み社会に貢献するために臨床研究への協力と支援を行っています。また、帝京大学の臨床研究のレベルの向上をめざして啓発?教育活動にも取り組んでおり、TARCセミナー、臨床研究公開講座、インターンシップを行っています。TARCでは設立以降これまでに多くの臨床研究を取り扱っており、数々の成果をあげています。さて、臨床研究は患者さんなどのご協力によって成り立ちます。そのため、安全第一に患者さん本位に考えて臨床研究の慎重な管理を行っています。また、多くの患者さんにご協力いただきますので、研究成果が十分に社会に還元できる意義のあるものになるよう努めています。多くの皆さまに臨床研究についてご理解いただきTARCとともに医学の進歩に寄与していただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。