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活動レポート
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TEIKYO SDGs reportQOLを高める「視能」

- SDGsに貢献する視能訓練士 -

3 すべての人に健康と福祉を4 質の高い教育をみんなに

3 すべての人に健康と福祉を4 質の高い教育をみんなに

瀧川 流星助教の写真 

帝京大学医療技術学部視能矯正学科 助教 瀧川 流星

2015年に帝京大学医療技術学部視能矯正学科卒業後、同大学院に進学し、2023年に博士課程を修了。2015年から2023年まで、同視能矯正学科にて助手を務め、2024年に助教となる。特に不等像視の改善に対して、積極的に取り組む。

このレポートを要約すると...

  • 視能訓練士は弱視や斜視の視能矯正や視機能の検査を行う国家資格を持つ専門技術職
  • 視能は人間が保持する”視る能力”を指す
  • 視能において、眼球が持つ機能が重要であることは言うまでもないが、情報を処理する脳の機能もまた極めて重要な要素となっている
  • 瀧川先生は帝京大学卒業後、視能訓練士の資格を取得し視能に関する研究を進めている
  • 長時間モニターを見ることによる斜視や不等像視?近視の増加に加え、高齢化による視機能の低下や白内障をはじめとする眼疾患の増加により、視能訓練士のニーズが高まっている
  • 特に視能は生活の質=QOL(Quality of Life)に直結する
  • 世界的にも子供を取り巻く環境の先端化や、先進諸国の高齢者たちのQOLはSDGsの課題のひとつ
  • 視能改善に挑む視能訓練士の存在は今後ますます高まっていくに違いない

“視能”をご存知ですか

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“視能”とは、眼球がもつ機能と情報を処理する脳の機能を総称した言葉です。誰もがわかる視能の一つに「見る=視力」がありますが、代表的なものの一つに過ぎません。光を感じる、色彩を判別する、見たものを結像させるなど多彩な能力があります。すべての視能は、眼球と脳が相互に関係することで機能します。まず人は、眼球を使って視覚情報を収集します。次に、後頭部にある視覚野という部分で情報処理を行い見ているものを認識するのです。脳に問題があると、眼球の機能が正常であったとしても認識に差が出ることがあります。たとえば、視力も両目のバランスも優れた眼球機能を保持していても、立体認識が苦手だという人がいます。これは、脳で情報を統合する能力が弱いために起こります。脳の機能が関わる視能事例としてわかりやすいのが両眼視機能でしょう。両眼視機能は、右眼の視覚と左眼の視覚が後頭葉の視覚野で同時に認識される感覚です。両眼視機能が正常な場合、左右の眼から送られた視覚情報は後頭葉の視覚野で1つの視覚として認識(融像)され、色や形の情報(静的立体視)と動きや奥行き情報(動的立体視)に分けられます。前者の情報は側頭葉に送られ「見ている物が何であるか」を判断します。後者の情報は頭頂葉に送られ「見ているものがどこにあるか」を判断します。そのため、斜視や弱視、視野異常など、眼から脳に至る経路に何らかの障害がある場合は融像や立体視といった両眼視機能が障害されます。このように眼と脳は密接に関連して働いているのです。

視能訓練士とはなにか

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視能訓練士は視能のプロであり、弱視や斜視の矯正をはじめ、視力検査、立体視検査、眼圧検査など、多種多様な視能検査を実施できる国家資格を持つ専門技術職です。私は10年前、帝京大学卒業後に視能訓練士の資格を取得しました。しかし、大学の4年間だけで学び切るには時間が足りませんでした。卒業時には実践的な現場を視野にいれて大学病院への就職も考えていましたが、教員と研究を両立できる現在のポストを選択しました。

普段私たちは眼科医と連携しながら仕事をしています。視能訓練士が医療行為をすることはできませんので、検査と分析を担当します。たとえば、視力が低下している患者さんがいるとします。単純な近視なら眼鏡やコンタクトレンズでよくなりますが、長期間見えにくい状態が続いたり眼精疲労を伴っている場合、他に眼球の疾患があるのか、脳に問題があるのかを検査することがあります。こうした検査と改善プロセスを考えることが我々の職域です。現代では、視能に関するさまざまな治療法が生まれており、検査することで適切な治療へとつなぐことができるようになってきました。たとえば、これまでは治らないと考えられていきた斜視も手術で目の角度をまっすぐに治すことができるようになりました。さらに、幼少期によく見られる弱視も、視力の良い目を塞ぎ弱視の目をトレーニングすることで改善できるようになりました。ただし長時間実施すると健全な目の視力低下につながるため、適切な時間を見極めてプログラムを構築することが求められます。大学病院であれば両目のバランスだけではなく脳の電気信号の波形を見ることもできるため、患者さんごとにより精密な視能を把握することができます。視能は日々世界中で研究が行われており、先進の情報が更新されています。

不等像視に挑む

現在私は”不等像視”の研究に注力しています。一般的に右と左で全く同じ度数を持つ人は稀。どなたでも多少の違いがあります。しかし、左右の屈折度数が1.00D以上離れたり、眼球の機能異常によって、頭の中に映る像の大きさや向きなどがはっきり異なる場合を不等像視と呼びます。ケースも様々で、それぞれの眼球から入ってくる像の左右幅が異なるもの、垂直方向に伸び縮みしているもの、左右斜めに歪み合わないものまで多様です。不等像視が生じると、日常的な生活のストレスが増したり、眼精疲労、頭痛といった症状につながりやすいのはもちろん、強い違和感を感じめまいが生じることもあります。私たちの研究室には不等像視を人為的に作り出すレンズがありますが、クラクラしてすぐに酔ってしまいます。

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私が不等像視にフォーカスしている理由は2つ。ひとつは、現代社会において先進機器が登場していることから、幼少期にすでに左右の視力バランスが悪く不等像視となるケースも見受けられます。もう一つは、高齢化が進展していることにあります。症状は一般生活者全般にも起こりうるので、視能訓練士の存在意義が高まっています。

SDGs社会におけるQOL

視能は、生活の質=QOL(Quality of Life)の良し悪しに直結します。先天的か後天的かは関係なく、目が見えなくなることの日常生活の不自由や心理的なストレスは計り知れません。また、小児では読み書きの習得など学習が困難になります。患者さんの状態は様々であり、それぞれに寄り添った検査や状況把握を適切に行うことだけでも、視能改善の第一歩となりえます。眼球の機能が失われてしまうといったケースはもちろん、脳に障害を負ったことで眼球機能に問題がなくとも視能が健全に働かなくなったという方もいます。視神経の病気により徐々に視野が欠けていき、やがて完全に失明してしまう患者さんもいらっしゃいます。患者さんに、まずどのように見えていることが正常なのか、どのような状態が異常であり、どう治していけるのかという啓蒙を行うことも重要な要素だと言えます。

「視能の回復」は人に大きな希望をもたらします。世界中で変わらぬ事実ではないでしょうか。世界の発展途上国では子供が増加している一方で、先進国では高齢化が急速に進行しています。すべての人たちのQOL向上のためにも視能改善は欠かせません。SDGs社会においては、すべての人たちの健康のベースの一つに「見る力」があるのではないでしょうか。視能訓練士として視能に関わるさまざまな疾患と向き合いながら、より健全な社会の実現に貢献していくことに大きなやりがいを感じています。